2013年4月24日水曜日

御用学者リスト制作中

被曝をめぐる御用学者の系譜より
http://arita.com/ar3/?p=4674

ところで、この重松逸造とはいったいどんな人物なのでしょうか。
重松が戦時中何をしていたのかは不明ですが、戦後は公衆衛生院の一員であると同時に、広島長崎の原爆被害について米国が作った原爆障害委員会(以下、ABCC)のスタッフでした。このABCCが解散した後、1975年に予防衛生研究所との再編でできたのが放射線影響研究所(放影研)。広島の日赤病院の一角にあり、被曝者を調べるだけで治してくれない処と地元では云われてきたそうです。それもそのはず、ABCCとは原爆を落とした米国が、原爆による被害をチェックするために作った機関であり、被曝に苦しむ人たちを救おうという研究機関ではありませんでした。そして、非被曝群ではなく低被曝群を比較対照とすることで、被曝被害を過小評価してきました。重松は放影研の理事長などを務め、実質的に放影研を牛耳ってきた人物です。
重松は被曝被害を過小評価しただけではありませんでした。日本で公害問題が深刻になり、水俣病をはじめいろいろな公害病が話題になった時にも名前が登場します。イタイイタイ病では公害認定がなされた後の1976年になって三井金属や自民党等が原因のカドミウムを否定する動きを見せ、それを受けてWHOにカドミウムの見直しを提起した学者の1人が重松でした。また、スモン病の時には厚生省の調査班班長となり、後日原因物質として認定されることになるキノホルムを原因としませんでした。つまり、キノホルムによる薬害を認めず、製薬企業や国を利する報告を行ったのです。詳しくは広河隆一さんの『チェルノブイリから広島へ』(岩波 1995)に書かれています(この本は絶版みたいなので最近出た新版らしきものを横に紹介しておきます)。
また、重松は、成人T細胞性白血病(ATL)の原因ウイルスの母子感染について、厚生省研究班の班長として1990年度に「全国一律の検査や対策は必要ない」との報告をまとめ、感染者の全国拡大を招きました。これは、国の対策が遅れたことによる被害という側面をもたらしました。これに関して重松は、今年1月の新聞インタビューで「私は、いわば雇われマダム的な班長だった・・・」と白状しています(雇われマダムに失礼な発言だ!)。
御用学者はその名の通り、国や企業の便宜を図るような話をしたり論文を書いたりするため、研究費等のお金がたっぷり貰えます。お金のある研究室の回りには研究者もたくさん集まるため、御用学者は集団化し大きな勢力となります。お金と人を握れば学会などを支配できますので影響力が増し、発言権も大きくなっていきます。これが(醜悪な)世の習い。

重松逸造にはたくさんの弟子がいます。最近メディアに出てくる長瀧重信(長崎大、元放影研理事長)は先のチェルノブイリ原発事故調査の時にも重松といっしょにシゴトをしています。広島大原医研の神谷研二。長崎大の山下俊一も、重松や長瀧らとチェルノブイリ原発事故の調査を行っており、その資金源は右翼笹川系の笹川チェルノブイリ医療協力(日本財団)でした。原爆と原発と戦後右翼を繋ぐ禍々しいリンクが垣間見えてきます。最近、山下の代わりに露出気味の高村昇というのは長崎大での山下の弟子になりますね。その他の有象無象の「御用学者」はネットで調べれば簡単にわかります。
重松、長瀧、神谷、山下、高村、・・・・彼らは、放射線の被曝影響を小さく見せるための御用学者です。それ以外にも、地震の影響を過小評価して原発の立地にゴーサインを出す地震学者、原発関連だけでも御用学者はたくさんいます。フランスのペルラン裁判と同様、彼らの犯罪は後できっちりオトシマエをつけなければなりませんね。

***井上利男さんのブログより

細野晴臣・原発担当大臣が主宰する内閣官房「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ(WG」の第7回会合において田中氏は報告をおこない、この同じWGの第5回会合に、ICPR(国際放射線防護委員会)科学事務局長のクリストファー・クレメント氏とともに、エートス・プロジェクトの主唱者、ジャック・ロシャール氏が出席し、その理念と実践を報告しています。

発表概要
児玉和紀 (財)放射線影響研究所主席研究員
酒井一夫 (独)放射線医学総合研究所放射線防護研究センター長
柴田義貞 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授
木村真三 獨協医科大学国際疫学研究室福島分室長・准教授
丹羽太貫 京都大学名誉教授
島田義也 (独)放射線医学総合研究所発達期被ばく影響研究グループリーダー
甲斐倫明 大分県立看護科学大学教授
中谷内一也 同志社大学心理学部教授
神谷研二 福島県立医科大学副学長
田中俊一 福島県除染アドバイザー、(財)高度情報科学技術研究機構会長
仁志田昇司 福島県伊達市長
福島県除染アドバイザー
(財)高度情報科学技術研究機構会長
田中俊一
 
 



三菱重工や原産協会から

写真
(写真)奈良林氏らが出席したストレステストの意見聴取会=3月29日、経産省
意見聴取会は保安院が審査にあたって専門家の意見を聞くために設置したもの。原子力や津波などの専門家11人で構成され、電力各社が提出したストレステストの1次評価書を審査しています。
ここでの審査結果をもとに保安院は2月13日に関西電力の大飯原発3、4号機について、3月26日には四国電力の伊方原発3号機について「妥当」とする審査書を内閣府の原子力安全委員会に提出しました。
本紙が情報公開で入手した企業などの寄付金の実績(2006~10年度)によると、聴取会の委員に名を連ねる奈良林直氏(北海道大学大学院教授)には、原子燃料工業と日本原子力発電の2社から計150万円の寄付がありました。
奈良林氏は3月29日の意見聴取会で、「ニューヨークで広域の大停電があった。わが国でも起きると、地震・津波・原発事故、そして第4の災害になりかねない」と発言。その上で、ストレステストの審査や発電所の対策などを「どんどん速やかにやってもらいたい」と主張していました。
阿部豊氏(筑波大学大学院教授)は、大飯原発3、4号機の原子力プラントを製造している三菱重工から計500万円の寄付を受けていました。
写真
(写真)関西電力大飯原子力発電所=福井県小浜湾から
山口彰氏(大阪大学大学院教授)には、三菱重工や原子力エンジニアリング、日本原子力発電、原産が計824万円を寄付しています。原産は福島第1原発事故後の昨年3月31日に14万円を寄付していました。
意見聴取会の進行役となっている岡本孝司氏(東京大学大学院教授)も三菱重工から200万円の寄付があったことが明らかになっています。
今回、本紙が調査した「奨学寄付」は、企業や団体が「研究助成のため」などとして、寄付先の教授を指定して大学経由で行っているもの。使途についての報告義務はありません。
こうした業界からの寄付は聴取会の席上でも問題となり、岡本氏が「三菱重工以外の企業からも寄付を受けている。大学のルールに基づいて適正に行っており、個人の利益のために使用していない」と釈明する場面もありました。
 
 
新聞赤旗よりhttp://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-04-02/2012040201_02_1.html

西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の安全性を検証した福井県の原子力安全専門委員会は、県民はじめ国民の強い不安や疑問の声をよそに2カ月足らずのスピード審査で「安全性」にお墨付きを与えてしまいました。その背景には、原発業界との深い関係があるのではないのか。改めてみてみました。


 福井県原子力安全専門委員会が大飯原発3、4号機の安全性を初めて議題にとりあげたのは4月16日のこと。財界、電力会社の意向を受けた再稼働を急ぐ民主党・野田内閣と歩調を合わせるように5回の会合を重ね、「安全性が確保されている」とした報告書を11日、福井県の西川一誠知事に提出しました。

 このスピード審査をした委員12人のうち、半数の6人が原発利益共同体の中核団体である「日本原子力産業協会」(原産協会)の会員企業から6年間で計1810万円の寄付を受け取っていました(表、5月4日付一部既報)。

 寄付した企業・団体は、関西電力が出資する「関西原子力懇談会」(関原懇)や大飯原発3、4号機の原子炉を納入した三菱重工業、敦賀原発を持つ日本原電など。福井県や大飯原発と関係がある企業が目立ちます。

 委員の中立性に疑問を残したまま、「安全性」にお墨付きを与えたことは、原子力行政への不信をさらに深めることになります。

表


http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-14/2012061401_04_1.html


【正論】
評論家・木元教子 真実を風評が駆逐して被害あり


2013.3.18 03:13 (1/4ページ)正論




 原発女王と言われている昔からの原発推進女性


http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/zatsukan/054/054-2.htmlより転載!

素晴らしいページです!!!

ICRPについて

<スライド4 ICRPの性格とその役割>

 国際的な勧告組織ならば、本来その性格は中立・公平でなければならない。中立・公平な組織はまた、各国放射線行政機構や放射線防護研究機関などからは独立していなければならない。また当然のことながら自前の研究機関、自前のスタッフを持っていなければならない。そうでなくては、各国放射線防護行政機関の誤りや規制のあり方に対して客観性に富む信頼できる勧告はできない。各国研究機関とも同様に公平・中立、独立した立場を保持していなくてはならない。

 ところが実際にはそうではない。ICRPのWebサイトを閲覧すれば一目でわかるが、本部の住所がない。本部がないからだ。研究所の住所がない。自前の研究所を持たないからだ。有給の職員は1人しかいない。現科学幹事のクリストファー・クレメント一人きりだ。
クレメントはカナダのオタワが自分の本拠なので、NHKの「追跡!真相ファイル76『低線量被ばく 揺らぐ国際基準』(2011年12月28日放映)」は「ICRPの本部があるオタワに科学幹事のクレメント氏を訪ねた」ともっともらしいことをいっている。クレメントが科学幹事に就任したのは2008年のことだが、それまで10年以上科学幹事だった「ICRPの名物男」ジャック・バランタインの本拠はスエーデンのストックホルムなので、この時はさしずめICRPの本部はストックホルムということになるだろう。

 ICRP(基準や放射性被曝リスクモデルを定める組織、と位置づけられている)は、各国の放射線防護行政担当者やその諮問委員や審議委員、あるいは各国の放射線医学研究機関と人的にも繋がっている。またICRPは国際的な評価機関や原発など核施設を運用する安全基準を提言する機関とも人的に折り重なっている。代表的には国連の放射線被曝評価機関である「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCAER)や国際的な核の産業利用エンジンである「国際原子力機関」(IAEA)などであろう。これら研究機関、基準・モデル決定機関、評価機関、防護行政機関、核の産業利用推進機関は国際的も各国内でも人的の繋がっており、同じ研究や評価、モデルが使い回されている。

 ICRPは客観性、公平性、独立性のいずれの観点からも非常に歪んだ国際組織だということができる。

ICRPの日本委員

 たとえば、ICRPの日本委員を例にとってみよう。ICRP主委員会(Main Committee)の中には京都大学名誉教授の丹羽太貫氏が入っている。丹羽氏は広島大学原爆放射能医学研究所(原医研)の教授として、広島原爆被爆者の放射線傷害研究にあたってきた。その実績を背景にして、京都大学放射線生物研究センター教授に就任。2007年放射線医学総合研究所(放医研)重粒子医科学センター副センター長を務めてから、2009年バイオメディクス株式会社という会社の社長に就任。バイオメディックスは2003年設立の会社で、「癌や症状の重い自己免疫疾患の治療薬を研究開発するバイオ医薬品企業」となっているが、資本系列は住友銀行系(現三井住友銀行系)の会社である。丹羽氏は2012年度に社長を退いているが(恐らく2013年3月末)、その間国際放射線防護委員会(ICRP)第1委員会委員(2001-2009年)、主委員会委員には2009年に就任して現在に至っている。また現在は原子力規制委員会傘下で開店休業状態の放射線審議会(文部科学省から移管)の会長代理をつとめ、2011年からは会長になっている。(原子力規制委員会管轄下で丹羽氏が引き続き放射線審議会委員であり続けられるかどうかは大いに疑問である)さらに丹羽氏はABCC(原爆傷害調査委員会)の後身である放射線影響研究所(放影研)の評議員でもある。

 つまりこういうことだ。丹羽氏は広島大学・京都大学と放射線医学の研究者として「客観的な」研究データを提出する立場にあった。放医研での立場もそうである。しかし研究者の立場でありながら、研究データを「客観的・中立・公平」の立場から批判・評価し、放射線被曝影響のリスクモデルや放射線防護行政の勧告を各国政府当局者におこなう立場のICRPの委員をつとめていた。そればかりでなく勧告を批判・評価しそれを日本国内の放射線防護行政に取り入れていく規制・監督官庁の文部科学省の諮問委員をつとめている。本来研究、評価、勧告、防護行政は個々別々に独立していなければ、信頼の置ける放射線防護行政は成立しない。ところが丹羽氏はこの4役を一人で掛け持ちしていた。これでは防護行政の科学的正統性・客観性が失われるのは当然といえよう。

 たとえば、ICRPの第1委員会メンバーの中村典氏。中村氏は東京大学の放射線基礎医学出身である。1984年には放影研に入所。2004年には主席研究員となって現在に至っている。ABCC=放影研は、放射線医学に関しては研究所として特別な位置にある。というのは、ICRPのリスクモデルの基礎となっているデータ(広島・長崎の原爆生存者寿命調査=LSS)はABCC=放影研が提供しているからだ。つまり中村氏はデータ提供役とそれを批判的に評価してモデルの基礎とすべきICRPに同時に属していることになる。プロ野球でいえば、選手が審判を兼任し、おまけにコミッショーナー事務局の主要事務局員を兼任しているようなものだ。

 第2委員会の石榑信人氏。石榑氏は2005年以来、名古屋大学の大学院医学系研究科・医療技術学専攻の教授であるが、一時期放医研にも席をおいたことがある。また、前述の放射線審議会の委員でもある。(電力業界とのつながりの深い石榑氏が引き続き放射線審議会の委員であり続けられるかどうか極めて疑問である)つまり石榑氏も選手、審判、コミッショナー事務局員の一人三役を兼ねていることになる。

 第3委員会には米倉義晴氏がいる。米倉氏は京都大助教授から福井大学の教授となったのち、放医研入り。放医研は国際的核の産業利用推進エンジンとして知られる国際原子力機関(IAEA)に日本における重要協力研究センターでもある。米倉氏は現在その放医研のトップ、つまり理事長の地位にある。放射線審議会は丹羽氏が会長なら米倉氏は会長代理のポジションである。放射線審議会の議論がICRPリスクモデル一色に塗りつぶされる道理である。自社で製造した製品を、販売先の会社に売り込むにあたって、現場営業マンなどいっさい使わず、手っ取り早く販売先の会社の会長と社長になったみたいなものだ。おまけに自社製品の部品の調達先で部品の開発製造に携わっている、という手回しの良さだ。

ICRP第4委員会

 もう1人、第4委員会の委員甲斐倫明氏についても見ておこう。甲斐氏は現在大分県看護科学大学の教授である。また他の委員同様旧文科省管轄の放射線審議会委員である。

 ICRPの第4委員会の使命は、「ICRPの勧告の現場応用」(Application of the Commission’s Recommendations)である。言いかえればICRPの勧告を職業被曝や公衆被曝の各段階、各階層、各局面に応用適合させることである。従って「電離放射線」防護に関係した組織や機構や専門家集団との窓口的役割を果たすことになる。

 つまり、第4委員会とは社会全体に入り込んで、ICRP勧告の現場実践を推進する委員会といって過言ではない。特にチェルノブイリ事故やフクシマ原発事故などが発生し、多くの放射線被曝者が生じた時には、第4委員会の本領が発揮される。事故による放射線被曝で様々な疾病が生じ、それが社会不安やとりわけICRPのリスクモデルや勧告の妥当性について世論が疑惑を抱き始めると、それを沈静させなだめ、また病気の原因を放射線被曝以外に向けさせるのもこの委員会の重要な仕事である。だから第4委員会の委員長が、フランスの放射線防護評価センター(CPEN)の所長で、『エートス・プロジェクト』の国際的旗振り役、ジャック・ロシャール氏であることは決して偶然ではない。また甲斐氏が朝日新聞など大手マスコミにしばしば登場し、また日本各地の商工会議所や青年商工会議所などビジネス団体主催の講演会に頻繁に登場し、「放射線を正しく恐がりましょう」と言って歩いているのも偶然ではない。また先にも触れた大分県に『放射線ってなんだろう?』というパンフレットをつくらせ、100mSv以下の被曝は安全です、とする「放射能安全神話」を大分県民に刷り込む仕事もICRPの第4委員会の重要な仕事というわけである。

 ところが実際、前述のように、たとえばセシウム137を経口摂取で体内部に取り込み、それが実効線量で100mSvの被曝だとすれば、その人は体重1kgあたり約770万ベクレルの蓄積をしていることになる。体重50kgだとすれば、その人の総蓄積量は3億8500万Bqということになる。現行環境省が主張する1kgあたり8000Bq以上は低レベル放射性廃棄物という定義を借りてきたとしても、体に3億8500万Bqのセシウム137の蓄積は、その生体そのものが、『生きている高濃度放射性廃棄物』(生きてはいられないだろう)ということになる。信じられない話かも知れないが、文科省の換算係数(その係数はICRPの提示する係数の丸ごとコピーなのだが)を使えばそうなる。「実効線量のトリック」についてはまた後にも触れる。
放射線防護の3原則

 さらにスライドに掲げておいたが、ICRPの「放射線防護の3原則」ほど、ICRPの、核推進の立場に立脚した『被曝強制委員会』ぶりを露骨に示した記述もないだろう。

 読み上げてみよう。

 「<正当化の原則> 放射線被曝の状況を変化させるようなあらゆる決定は、害よりも便益が大となるべきである」

 「放射線被曝の状況を変化させるようなあらゆる決定」とは、いうまでもなく、職業被曝や公衆被曝の上限設定の変更である。「害」とはいったい何か?いうまでもなく、被曝で受ける私たちの健康損傷である。「便益」とはなにか?いうまでもなく、原発など核施設を運営することによって得られる便益(utilitiesと解釈してもいいしbenefitsと解釈してもいい)のことである。原発に限定して言えば、そこから得られる「電気」である。つまり、被曝上限値を変更する決定は、被曝で受ける私たちが被る健康損傷全体よりも、原発など核施設から得られる便益が大きくなるように設定すべきである、といっている。

 この第一原則を全面的に発動して、「放射線被曝の状況を変化」させなければならない事態が、1986年に実際に発生した。チェルノブイリ原発事故である。それまでのICRPの勧告に従えば、公衆の被曝線量は「年間1mSv」である。これは1985年のいわゆる「パリ声明」でICRPが公式に明らかにし、1990年勧告で定着化させた。(当時の単位では年間0.1レムが公衆の年間被曝上限。1Sv=100rem) ICRPにとって不運だったのは「パリ声明」の翌年にチェルノブイリ事故が起こったことだった。つまり「公衆の被曝線量年間1mSv」を守ろうとすると、旧ソ連の重度汚染地域に住む人々(現在のロシア、ベラルーシ、ウクライナの3か国)で830万人に人々に避難や移住を含む何らかの対策を取らなければならない。830万人の数字は「チェルノブイリの恐ろしい健康被害」を参照した。参照資料リスト掲載)

 これは厖大な社会コストである。またこれらの費用は国家財政に深刻な打撃を与える。(実際旧ソ連政府崩壊の一因はチェルノブイリ事故の厖大な対策費用だったという指摘もある)結局予測被曝線量5mSvの住民53万5000人を移住または避難させた。これでも厖大なコストである。

 ICRPの側に立って事態を解釈すると、この時様々な「非便益」が生じた。移住・避難に係わる厖大な社会・行政コスト、様々な病気に対する医療コスト、被曝低減に伴う様々な福祉コスト等々である。もしかすると、「反原発感情」を和らげる広報・宣伝コストも「非便益」の中に算入させていたかも知れない。こうした「非便益」は当然放射線被曝による健康損傷全体よりも下回らなくてはならない。それにはどうするか?ここで「放射線被曝の状況を変化させる決定」を行わなくてはならない。しかし答えは簡単・安易である。「公衆や職業被曝の被曝線量」の上限を上げればいいのである。こうしてチェルノブイリ事故のほとぼりが冷めかかった2007年勧告でこの「決定」を勧告に盛り込んだ。すなわち「3つの被曝状況」の設定である。3つの被曝状況とはすなわち「緊急被曝状況」、「現存被曝状況」、「計画被曝状況」の3つである。詳しくは立ち入らないが、結論としていうと緊急被曝状況を設定することで、苛酷事故時には一挙に年間100mSvまでの被曝上限にまで引き上げたのである。(詳しくは次の記事参照のこと。「『緊急時被ばく状況における人々に対する防護のための委員会勧告の適用』など」)ICRPにとって今度は幸運なことに、2011年3月に発生した「フクシマ原発事故」に今度は間に合ったのである。そうして「フクシマ原発事故」と日本は2007年勧告でいう「3つの被曝状況」の最初の適用事例となった。

 第2原則「<最適化の原則>被曝の生じる可能性、被曝する人の数及び彼らの個人線量の大きさは、(個人の健康問題を最優先にして、ではなく)すべての経済的及び社会的要因を考慮に入れながら、合理的に達成できる限り低く保つべきである」も同様に原発などの核施設は絶対必要の考え方に基盤を置いている。なお「合理的に達成できる限り低く保つ」原則は「ALARA」(”as low as reasonably achievable”)の原則としてICRP内では定式化されている。

 第3原則「<線量限度の適用の原則>患者の医療被曝以外の、計画被曝状況における規制された線源のいかなる個人の総線量は、委員会が特定する適切な限度を超えるべきではない」
 原発など核施設が事故を起こさなくても放射能を出し続けている現実を知らない人には『計画被曝』といわれてもピンとこないかも知れない。計画被曝とは原発など核施設は事故を起こさなくても厖大な放射能を放出しているのである。(特に青森県六ヶ所村の核再処理施設が年間に放出する放射能の量は驚くべきものがある。これらは各事業者が計測したデータで信頼できない側面はあるが、原子力安全基盤機構の「原子力施設運転管理年報」に一応は掲載されている)

 事故は起こさないが普段に放射能を出し続けている状態、私たちが一定の「管理」された放射能に被曝させられている状態、これが「計画被曝」である。要するに「計画被曝」の状態の時、ICRPの定めた上限値を超えるべきではない、といっているにすぎない。繰り返しになるが、「計画被爆時」公衆の被曝線量の上限は、年間1mSvとICRPは勧告している。やや細かいことになるかも知れないが、「患者の医療被曝」とはどういう意味であろうか?いうまでもない。X線検査やCTスキャン、あるいは放射線治療などで私たちが被曝させられている状況を「医療被曝」と呼んでいる。そしてその上で、医療被曝の上限については、ICRPはあずかり知らない、といっている。これは医療被曝が安全だからではなく、X線検査やCTスキャン検査、あるいは放射線治療などによって受ける患者の利益と、放射線被曝によって患者が受ける不利益(当然被曝して健康損傷するのだから)を比較考量してそのバランスの上で患者に利益があると判断できるのは、担当医師だけだからだ、というのが建前の理由であり、それはそれで筋が通っている。要するに医療現場のことは担当医師に任せ、ICRPは容喙しない、ということだ。
 (これはこれで先進国では大問題になっている課題ではある。というのは、患者の信頼をいいことに不必要な被曝、過剰なX線照射、過剰なCTスキャン検査、過剰な放射線治療などで患者に放射線傷害が発生している問題。なにしろこの分野は利益率が高いものだから)

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